Beating 第4号
「モバイルメディアの学習利用・研究の最前線」
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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「beating」 第4号 2004年9月30日発行
現在登録者209名
「モバイルメディアの学習利用・研究の最前線」
http://www.beatiii.jp
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厳しい残暑も和らぎ、ようやく涼しく過ごしやすい秋の到来です。
メジャーリーグでのイチローの記録更新がなるかが気がかりな毎日です。
さて、お陰様で、9月4日に開催された「beat seminar」第2回は、120名を超
える方々にご参加いただき大盛況のうちに幕を閉じました。
今月の「beating」は、この「beat seminar」第2回との連動企画ということ
で、違う角度から光を当てた特集を組んでみました。
残念ながら「beat seminar」に、来られなかった方々にも、是非、「BEAT」
のWebサイトと読み合わせて、熱気を感じて頂ければと思います!
モバイルメディアのフロンティアへアナタを連れ去る、beating第4号お楽し
みください!!
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┃★CONTENTS★
┃
┃■1.特集:徳島大学工学部 緒方広明助教授インタビュー
┃「学習を日常生活へ!ユビキタス学習環境のフロンティア」
┃
┃■2.お知らせ:「beat seminar」第3回 10/9(土)開催!!
┃
┃■3.「紹介したいこの人この1冊。 オススメお蔵出し!」
┃
┃■4.編集後記
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■1.特集:徳島大学 工学部 緒方広明 助教授インタビュー
「学習を日常生活へ!ユビキタス学習環境のフロンティア」
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8月、総務省が平成17年度「ICT政策大綱〜ユビキタスネット社会の実現へ向
けて〜」の中で、次世代のICT戦略として「u-Japan構想」を提唱しました。
いよいよ、日本でも、2010年を目標とした「いつでもどこでも快適なネット
が利用できる社会の実現」が目指され始めました。
一方で、PDAや携帯電話の教育利用は、日本だけでなく、欧米、アジアでも
注目を集める研究領域です。
PDAや携帯電話を使うことによって、現在、何がどこまで可能になっている
のか。諸外国では、どのような教育利用が展開されているのか。いつでも、
どこでも、学べる環境はどんな学習を私たちにもたらしてくれるのか。
今月の特集は、9月4日に開催された「beat seminar」第2回との連動企画と
して、徳島大学助教授の緒方広明先生にお話を伺いました。
「beat seminar」で、「モバイルメディアの学習利用・研究の最前線」と題
して、国内外のモバイルメディアの最新の研究動向について講演して頂きま
した。
「beating」では、「ユビキタス学習環境」をキーワードに更に、掘り下げ
たお話を伺っていきます。
※講演の模様や緒方先生の発表資料が「BEAT」のWebサイトからご覧になれ
ます。是非、コチラも合わせてご覧ください。
http://www.beatiii.jp/seminar/002.html
■緒方 広明(おがた ひろあき)
徳島大学工学部知能情報工学科助教授
仕事場での情報共有やコミュニケーションの効率化をはかり、グループによ
る協調作業を支援する「CSCW(Computer Supported Collaborative Working
)」研究や協調学習を支援する「CSCL(Computer Supported Collaborative L
earning)」研究に従事。
http://www-yano.is.tokushima-u.ac.jp/ogata/index-j.html
…………………………………………………………………………………………
□1.ユビキタス学習環境とは?
…………………………………………………………………………………………
緒方先生は徳島大学で、「u-Campusプロジェクト」というPDAや携帯電話
を利用して、「いつでもどこでも」学習ができる環境を創る研究をされてい
ますが、具体的には、どのような学習が可能なのでしょうか。
「いつでもどこでも」学習が可能な環境は、一般的に、「ユビキタス学習環
境」と呼ばれています。「ユビキタス」とは、ラテン語で「遍在」という意
味ですね。あらゆるところにある、ということですね。英語ではCSUL(Comp
uter Supported Ubiquitous Learning)ですね。
これは、社会や生活の至る所にコンピュータが埋め込まれていて、それらが、
生活をしている人々には意識されずに互いに連携して、人々の日常的な学習
を支援するような環境のことです。
例えば、学校で子どもたちが、野外学習に出たときのことを思い浮かべてみ
てください。
普通は、植物や木を観察して、ノートにメモをしたり、写真を撮ったりしま
す。それらを教室や図書館に持ち帰って、仲間と振り返ったり、より詳しい
資料と見比べたりして学習をしますね。
一方、ユビキタス学習環境では、子どもが、PDAや携帯電話を持って植物や
木の前に立つと、その周辺に埋め込まれていたコンピュータから手持ちの端
末に、その植物についての詳細な情報が送信されます。その場で、観察を行
いながらより深い学習を行うことができるわけです。
また、それぞれの子どもが観察し、調べた内容をデータベースに蓄積して共
有したりすることもできます。
ユビキタス学習環境の特長を学習者の立場から見ると、5つの特長を挙げる
ことができます。
【ユビキタス学習環境の特長】
1.学習環境の常設性
それぞれの学習者が日頃慣れ親しんだ環境で、いつでもどこでも学習でき
る。毎日の学習を実現できる。
2.学習ニーズに関する即時性
いつでも、どこでも時間場所に制限がなく、学習が必要な時に、十分な学
習が行える。学習をしたいと思ったら、すぐに学習することができる。
3.学習時の持続性
電子メールや掲示板、ビデオなどを用いて、いつでもどこでも、教材にア
クセスしたり、教師や専門家、他の学習者とやりとりが可能である。人々
を繋ぎ、学習を生み出す新たな共同体を育むことも期待できる。
4.学習効果の実用性
現実世界の問題解決に関連した学習が可能。より「本物」に触れたAuthen
tic Learningを促進することができる。
5.学習活動での状況性
学習者が、現実に、日常生活において問題と向き合う状況下での学習が可
能となるので、その状況に応じた問題の理解や、それに関連する知識の獲
得が促進される。
…………………………………………………………………………………………
□2.英語学習の苦労が研究のキッカケに!?
…………………………………………………………………………………………
どのようなきっかけでユビキタス学習環境を研究されたのですか?
僕は在外研究員として、アメリカのコロラド大学に行っていました。その時
すごく凄く困ったんですね。困ったというのは、言語の学習、つまり英語の
学習についてなんです。
常に、辞書は持っていたんですけれども、辞書だけでは用例が少ないのです。
用例こそが大事なんですけれども、それが足りない。単語の意味はわかるん
ですけれど。
例えば、何か食べ物を買いに行ったときに、目の前にあるモノが何かは調べ
れば解るんです。けれども、それをどうやって食べたらいいのか、とか、料
理の仕方とか、それに付随する情報ですね。これは辞書だけではどうしよう
もないんです。「これ、なにするんかなぁ」、って(笑)
エピソードと言いますか、経験と言いますか、それを蓄積できるようになれ
ばいいかな、と思ったんです。
そういった情報をずっと持ち歩くには、コンピュータのノートブックとかは
難しいので、メモ代わりになるPDAや携帯電話に着目しました。そういった
いつでも持っているものが良いんですよ。その場で、その時に学習にできる
っていうのが大事なんです。
最近は、PDAや携帯電話には、録音の機能がありますから、何か喋られたと
きに解らなかったときは、もう一回喋ってってお願いして、録音しておいて、
その場で後で解る人に教えてもらうとか。そういうことができたらなぁ、と
いうことも考えたんですね。
日本に帰ってみると、留学生の人が、もっと苦しんでるんですね。僕は、英
語をある程度勉強してから行きましたけれども。留学生の人は自国でも日本
語を勉強してきてるんですけれども、日本に来てからは全くしゃべり言葉が
違うって言うんですね。
口語体と文語体は全然違いますから、それと同じでかなり戸惑いがある、と
いうことで、そこをちょっと何とかできないか、と思ったんですね。
PDAを持ってもらって、その場所場所で、必要な、適切な表現を出すような、
提示してあげるようなシステムを作りました。
それをもっと広げて、普通の授業でもPDAを使ってやろうとか、あと家に帰
っても何かわからないところをPDAにメモして持ってくるとか、学生さん一
人一台PDAを持ってもらって、それで学びの支援ツールとして、紙と鉛筆の
ような感じで何か困ったことですとか、書き起こしていって、みんなで共有
していって学習に繋げていこうと。
それがデジタルユーザモデルとかデジタルポートフォリオと呼ばれるものに
当たると思います。
例えば、図書館でこんな本を借りました、とか、本屋さんでこんな本を買い
ましたといった情報が逐一蓄積されていけば、同じ興味を持っている人を集
めてディスカッションができる。そして、端末としてはPDAで、全てPDAから
情報を参照することができます。
それが、現在、徳島大学で行われている「u-Campusプロジェクト」ですね。
そうですね。その一部ですね。u-Campusプロジェクトは、hp(ヒューレッ
ト・パッカード)社の「モバイル端末の教育への利用」研究助成を受けてい
ます。
携帯情報端末を使って、大学の従来の講義形式とe-learningの学習を繋ぎ、
e-leaningと日常の出来事を教材とした、いつでもどこでも学べる学習環境
をデザインするものですね。こうした環境のもとで、学習者が対話を重ね、
学習を深めてくれることを期待しています。5年間の実践研究を行います。
…………………………………………………………………………………………
□3.海外のモバイルメディアの学習利用・研究の最前線
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海外でのご経験が研究のきっかけとなった、とのお話しでしたが、より直
接的に、海外のモバイルメディアを使った研究で興味深かったものを教えて
ください。
コロラド大学で行われていた「CLever(クレバー)」というプロジェクトが
あります。「Cognitive Lever ※註1」の略ですね。認知障害ですとか、短
期記憶の障害だとか、身体の障害の人を普通の健常者の人と一緒に生活がで
きるように情報提供をしようというプロジェクトでした。
※註1 CLever
http://www.cs.colorado.edu/ ̄l3d/clever/
例えば、バスに乗るとき、1人1人にPDAを持ってもらって、バスがどの町の
どこにいるかが解るですとか、どの時刻にどのバスが来るので、それに乗れ
ばいいといった情報が提供されます。
また、アメリカのお店は広いので、買い物先に行って、ある買い物したいモ
ノを選択すると、その買い物したいモノへの最短ルートかわかる、最短距離
が解るとか、そういうものがありましたね。
そういった支援は、広い意味での学習に繋がる。その人の活動、認知のレベ
ルを押し上げていく、まさに、「Cognitive Lever」です。そのレベルに合
わせた支援を行って、レベルアップしてもらうという話なんですね。
海外のモバイル学習の動向というと、ドリルとかそういう学習っぽいもの
をイメージしていたのですが、「CLever」プロジェクトの事例はむしろ、日
常に埋め込まれた学習、という印象ですね。
それはおそらく、海外全体の動向というより、僕がいたコロラド大学の特徴
だと思いますよ。
一般的には、学校教育の文脈で用いられることが多いですね。
「100の授業でPDAを用いた結果、90%の教師がその有効性を認めた」という
調査結果があります。※註2
そうした授業でのPDAの利用法というのは、授業で生徒に理解度を示しても
らうもの、Q&A形式のアンケートをとるもの、PDA端末を持ってワークショッ
プ形式で学ぶような参加型のシミュレーションを行うようなもの。学生が共
同でPDA端末を使ってデータ収集をするもの、冒頭で挙げたような、生徒の
まわりの状況に対応した情報を提供するシステムが主ですね。
日常生活の文脈で使っていく、というのは、まだ、あまり試みられていない
という感じだと思います。
そうすると、徳島大学のキャンパスを使って大々的に展開されるu-Campus
プロジェクトは、そういった日常生活の文脈での学習支援として、非常に興
味深いものですね。
※註2
J. Roschelle: Unlocking the learning value of wireless mobile device
s,Journal of Computer Assisted Learning, Vol.19, pp.260-272, 2003.
…………………………………………………………………………………………
□4.実践をひとつひとつ積み重ねること
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PDAや携帯電話を利用した研究というのは、今、まさに大きなムーブメン
トとなろうとしています。その最前線で研究を展開される上での意気込みを
教えてください。
実践の事例をひとつひとつ積み重ねたいですね。
僕らは大学ですから、大学の中でやってきたことを、ノウハウを蓄積して情
報発信することができます。将来的には、そのノウハウを小学校・中学校・
高校といったところでもし必要であれば、持って行って立ち上げられる、と
いう学習のサポートができればいいな、と思っています。
そのためには、何よりもまず、どうやったら上手くいくとか、失敗するとか、
そういう事例を集めていくことが大事だと思うんです。こればっかりは、自
分の中でやってみないと解らないことですから。
ひとつのクラスで1週間活用してとか、そういう事例は既に何件かあるかと
思います。
けれども、より長期間にわたって、もっと大きな組織で行われるもの、特に、
大学全体でそのようなものに取り組むとか、小学校全体で取り組むとか、組
織全体として取り組むというのは、まだあまりないと思います。ですので、
それをまずやってみたいと思います。
多分、システム的な話ですとそれ程凝った話ではないと思うんです。シンプ
ルな既存の技術で良いと思うんです。
あんまりシステム面で懲りすぎてしまうと、できるところとできないところ
が出てきますから、そこはトレードオフなんですが、「シンプルで、みんな
が使える」というのが大切なのだと思います。
「実践&fun to learnが重要!」と強調されていたのが印象的でした。い
つでも、どこでも継続して楽しく学習できる社会の未来予想図を見せていた
だいたように思います。ありがとうございました。
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★2.【お知らせ】公開研究会「beat seminar」第3回10/9(土)開催のご案内
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来たる10/9(土)、「BEAT」では、第3回目の公開研究会を開催いたしま
す!
「BEAT」の研究内容や、教育に関するIT技術利用に関する最新動向などをテ
ーマにした公開研究会です。開催情報は、公式Webサイト、もしくは、この
メールマガジン「beating」でご案内を差し上げます。
第3回目となる今回のテーマは、「ヨーロッパ・m-learningの現在」です。
———————————【公開研究会 概要】—————————————
●テーマ
「ヨーロッパ・m-learningの現在」
●日時
2004年10月9日(土曜日) 午後2時〜午後5時
●場所
東京大学工学部11号館講堂
◇アクセス
http://www.u-tokyo.ac.jp/jpn/campus/map/map01/e21-j.html
◇東京大学への最寄り駅
東京メトロ 丸ノ内線 本郷三丁目駅(徒歩5分)
都営大江戸線 本郷三丁目駅(徒歩5分)
●内容
日本だけではなく、世界で新しいメディアとして人々の間に着々と
普及が進んでいるケータイやPDAなどのモバイルメディア。
イギリス・フィンランドにおける、その教育的な新しい利用形態や
実践について、BEATメンバーが視察しました。
行政、放送メディア、通信キャリア、基盤技術など、m-learningを取り巻く
多面的な要素から、ヨーロッパにおけるm-learningの現状をご報告します。
●定員
100名
●参加費
無料
●講演
■イギリス
◇「NESTA futurelab」
◇「バーミンガム大学 Dr.Sharples研究室」
◇「BBC」
◇「LSDA(Learning and Skills Development Agency)」
■フィンランド
◇「ヘルシンキ芸術デザイン大学 Media Lab」
◇「NOKIA」
※発表者は現在検討中につき、決定次第Webサイトにて随時公開しま
す。
★参加方法:セミナに参加希望の方は、BEAT Webサイト
http://www.beatiii.jp/seminar/index.html
にて、ご登録お願いいたします。
*このお知らせは自由に転送いただいて結構です。
*当講座の概要は、http://www.beatiii.jp/ よりご覧いただけます。
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★3.紹介したいこの人この1冊。 オススメお蔵出し!
今回は・・・静岡大学情報学部 堀田龍也助教授
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広く教育やメディアの研究に携わる研究者から、「オススメ本」を、お友達
紹介形式でお伝えする「紹介したいこの人この1冊。オススメお蔵出し!」
のコーナーです。
第3回目となる今回は、前号の特集にご登場いただきました堀田龍也先生に
「オススメ」本をご紹介していただきました。
堀田龍也先生のホームページ
http://horitan.net/
堀田先生にご登場頂いたbeating第3号はコチラから
http://www.beatiii.jp/beating/003.html
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1)情報検索のスキル—未知の問題をどう解くか
三輪真木子(著)、中公新書
私の専門分野は情報教育ですが、私のところの大学院生には図書館教育を専
攻している方もいます。それは、図書館教育の求めている学力が、情報教育
のそれと近い部分があるからです。どの部分がどのように近いのか、あるい
は異なるのかについてよく議論になります。この本は、そのことを考える1
つのきっかけになる本です。(堀田)
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121017145/
2)「考える力」はこうしてつける
ジェニ・ウィルソン,レスリー・ウィング・ジャン(著),吉田新一郎(訳)
新評論
学力には「学んだ力」「学ぶ力」「学ぼうとする力」があると言われます。
多くの学力論争が「学んだ力」の程度の上下を議論していますが、ほんとう
に必要なのは「学ぶ力」や「学ぼうとする力」、すなわち興味関心を持ち、
知的好奇心を追求し、調べたり考えたりする力を持っているということだと
思います。この本は、学ぶ力のうちの「考える力」を身につけさせる具体的
な指導方法について書かれたものです。(堀田)
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794806280/
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次号は日本科学未来館副館長の美馬のゆり先生の登場です。
堀田先生から美馬先生への紹介メッセージです。
美馬先生は,情報技術がいかに学びやコミュニティーを支援できるかという
観点から研究を進めていらっしゃいます。主著に「不思議缶ネットワークの
子どもたち」があります。この本はインターネットの教育利用の黎明期に書
かれた本ですが,インターネットが形成する新しい学習コミュニティーの可
能性と難しさについて,すべて指摘していることに今さらながら驚かされま
す。日本科学未来館副館長の要職をこなしながら,認知科学研究者としての
第一線の研究も続けているパワフルな方です。
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■4.編集後記
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「ユビキタス」という言葉を僕が初めて知ったのは、大学院に入ろうと勉強
していた2001年の夏のことでした。新聞社や出版社が出しているキーワード
集に載っていたのです。
その時のイメージは、「そんな社会がやってきたら大変(?)だなぁ」とい
う、どこか他人事で、全く現実味のないものでした。
あれから3年。先日、東京工業大学で催された日本教育工学会第20回全国大
会のシンポジウムで、富山大学の黒田卓先生が「果たして、ユビキタスで
教育は変わるのか」、「教育の要請に対応した学習支援を考えなければなら
ないのではないか」と仰っていました。
今号では、モバイルメディアで何ができるのかという事例をご紹介いたしま
した。いよいよ、具体的な新しいモバイルメディアの教育利用の可能性の未
来が見えてきました。皆さんは、ご紹介した事例についてどのような感想を
抱かれましたか?
技術と社会の関係を捉えるのはムツカシイことです。一筋縄ではいきません。
そんな時、大切なのは、新しい技術と素朴な疑問を照らし合わせ、定期的に
議論し続けられる場がある、ということだと思います。
「beat seminar」で皆さんとお話しができるのを楽しみにしております。
「beating」編集担当
酒井俊典
shun@beatiii.jp
-------次回発行は10月第3週頃の予定です。
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ご登録先は、ベネッセ先端教育技術学講座になります。登録にあたって、お
知らせいただいたお名前・メールアドレスなどの個人情報は、ベネッセ先端
教育技術学講座にて、「beating」からのお知らせのためだけに使用いたし
ます。また、ご本人の同意なく、第三者に提供することはございません。
「beating」はお申し込みをいただいた方々に配信しています。
無断転載をご遠慮いただいておりますので、転載を希望される
場合はご連絡ください。
□登録アドレスの変更、登録解除などはコチラ
http://www.beatiii.jp/beating/index.html
□ご意見ご感想はコチラ
「beating」編集担当
酒井俊典(東京大学大学院 学際情報学府 山内祐平研究室 博士課程1年)
shun@beatiii.jp
□「BEAT」公式Webサイト
http://www.beatiii.jp/
□発行
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2004.Interfuculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo.All Rights Reserved.
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