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037:2008年度 第4回 2009年3月28日開催

特別セミナー 教育工学25年の歴史から考えるデジタル教材の未来
パネルディスカッション
「これからのメディアと学習」

  • 教育工学25年の歴史から考えるデジタル教材の未来
  • パネルディスカッション「これからのメディアと学習」

パネラー

  • 赤堀侃司先生(日本教育工学会 会長/東京工業大学 教育工学開発センター 教授)
  • 新井健一氏(株式会社ベネッセコーポレーション 執行役員)
  • 向後千春先生(早稲田大学 人間科学部 准教授)

司会

  • 山内祐平(BEATフェロー/東京大学大学院情報学環 准教授)

赤堀先生私が考える現在の主な問題意識は以下の3つである。

(1)これから教室に小型のコンピュータが入ってくるだろう。しかし、紙もなくならない。コンピュータと紙をどう合わせるか。
今はデジタルペンが出てきた。つまり、デジタルが紙の要素を融合する方向が出てきている。さらには、電子ペーパーも登場してきた。これは、紙ではできない特徴、例えば大きく写すこともできるので、紙とデジタルの融合化をしているものだといえる。

(2)活字の上に、手書きの文字を重ねる電子黒板が出てきている。つまりこれからはブレンド型であっても、聞いているだけのものではなく、デジタルと手書きを重ねる主体的なものが出てくるのではないか。

(3)人のいないeラーニングでうまくいかない部分に対して、人をどう組み合わせるか。

赤堀侃司 また、TPACKというモデルは「教育」と「テクノロジー」と「科目別のコンテンツ」の3つを、バラバラではなく、統合される形で研究をしていかないといけない時代になりつつあること主張したモデルである。つまり、今までは「認知的な効果」と「実践的な効果」を研究し、「現実の場における実践」を行うことをしてきたが、それだけでなく「デジタル技術の導入」によって良さをさらに引き立てることが大事なのだと考える。そして、「デジタル技術の導入」による知見をデジタル技術だけの範囲で終わらせるのではなく、「認知的な効果」と「実践的な効果」の方にフィードバックしていくことがこれからのモデルになると考える。

新井健一 新井氏TPACKモデルは興味深い。
まずテクノロジーを考えると、1970年代に3万円した電卓が、現在は数百円で買えるようになっている。そう考えるとパソコンの急速な低価格化と同時に、おそらく新しいデバイスが出てくるだろう。特に、赤堀先生が言われたように電子ペーパーは重要なものになると思う。デバイスには、「軽くて・丈夫で・賢くて・心が広くて・オープン性・バッテリーが長持ちする」というのが要件になる。その点で、手書きも可能な電子ペーパーは今後重要なものになると思う。

それから、認知的な視点から考えると、「構造化」は重要である。たとえば、ダラダラ話すよりも、ポイントは3つありますといったほうが伝わりやすい。

また、コンテンツに関しては、これからはリッチ化とスマート化の方向になっていくと思う。リッチというのは、ハンディカムなどでハイビジョン映像が取れるようになっているように高精細な動画が増えるという意味で、スマートというのは今日の発表であったように、協調フィルタリングのように賢いシステムが媒介してくれるという意味である。

おそらくこれからはこの3つ(テクノロジーの進化、認知的知見、コンテンツの進化)が組み合わさってくるのだと思う。

向後千春 向後先生「CAI(Computer Aided Instruction)は死んだ」とよく言われるが、これは大きな間違いだということを指摘したい。CAIは死んでいないということを共通認識として持っていないと、これから先の未来の教育は語れないと思う。というのも、CAIはいまだに成功し続けている。それは、「即時フィードバック」と「学習者の反応による分岐」があるものは、どんなシステムであれCAIの原理が生きているということである。

もしこれから色々なデバイスが開発されたとしても、「即時フィードバック」と「学習者の反応による分岐」の2つを踏まえていないと必ず失敗する。断言していいと思う。これからの教育を考える際にも、この2点を忘れてはいけない。

パネルディスカッション「これからのメディアと学習」

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