Beating 第32号
2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
第10回:学びの全体としての“生”を捉える〜『LIFE』
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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第32号 2006年1月30日発行
現在登録者1287名
2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
第10回:学びの全体としての“生”を捉える〜『LIFE』
http://www.beatiii.jp/
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皆さまこんにちは。
2007年第1弾のBeatingです。
本年もBEATの活動をはじめ、学習に関するみなさんに役立つ情報をお届け
していきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、2006年度Beating第32号のスタートです!
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┃★CONTENTS★
┃■1. 特集:2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
┃ 第10回:学びの全体としての“生”を捉える〜『LIFE』
┃
┃■2. 【お知らせその1】公開研究会「BEAT Seminar」2006年度第9回:
┃ 「BEAT 2006年度研究成果報告会」〜3/24(土)開催!
┃
┃■3. 【お知らせその2】2006年度第8回公開研究会「BEAT Seminar」
┃ Webサイトのご案内
┃
┃■4. 編集後記
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■1. 特集:2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
第10回:学習科学の基礎を目指す〜『LearnLab』
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今年度のBeatingでは、BEATの研究をより理解していただくため、Beatingで昨
年度までに見てきた学習理論を土壌に、世界各地で花開いている学習プロジェ
クトを、1年を通じてみなさんに紹介していく講座を開講いたします。
昨年度のBeatingバックナンバー
http://www.beatiii.jp/beating/index.html
「◯◯理論とは言うけれど、いまいち具体的なイメージがわかないなあ…」
「どうやったら教室や学びの場に実際に使えるのだろう?」そんな声にお答え
するべく、今年度のBeatingでは古今東西学習プロジェクトの"いま"を、
みなさんにお届けしていきます。
さて今回は、前回に引き続きアメリカ合衆国の最新の学習プロジェクトをめぐ
る状況をレポートします。学習というのは、学校の中だけで起こっているもの
ではありませんでしたね。今回のプロジェクトは、学校外の学習にも注目して
います。
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第10回:学びの全体としての“生”を捉える〜『LIFE』
プロジェクト名:LIFE
国・発足年 :アメリカ合衆国・2004年
代表者 :ジョン・ブランスフォード他
所属 :ワシントン大学、スタンフォード大学
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■アメリカがすごいことになってるらしい?
(その2)
先月は、アメリカ合衆国の最新の学習プロジェクトとして、莫大な基礎データ
をもとにこれからの学習科学の礎となる知見を生み出すことを目的としたプロ
ジェクト、Learnlabをご紹介しました。NSF(National Science Foundation、
全米科学財団)が学習科学分野に対して投入した43億円の資金は、ほかにも
3つのプロジェクトに投入されています。今回は、その中のもう一つのプロジェ
クト、LIFEについてご紹介したいと思います。
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■学びの全体としての“生”を捉える
LIFEとは、The Learning in Informal and Formal Environments、つまり
「インフォーマルな環境/フォーマルな環境における学び」の頭文字をとった
もの。フォーマルな学習とは、学校などの制度的枠組みの中で規定された、
一般的に言うところの机上の勉強です。それに対してインフォーマルな学習と
は、それ以外の生活の場、たとえば家庭や地域の博物館、公民館などで人々が
自発的に行う学習のことを指しています。フォーマルな学習は人生の一時期、
子どもの頃にしか存在しないことが多いですが、インフォーマルな学習は生涯
にわたって続いています。つまり、「インフォーマルな環境/フォーマルな
環境における学び」とは、人間の“生”(Life)の全体を指すのです。
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■学際的な研究の場
LLIFEは、ワシントン大学とスタンフォード大学が中心となって活動している、
学際的な研究プロジェクトです。人が学ぶということについて、神経、認知、
発達、そして社会文化的アプローチといった、学習に関わるさまざまな分野の
知を横断したさまざまな研究が行われています。リーダーは、認知や学習を語
る上で外すことができない名著、"How People Learn"(邦題『授業を変える』)
の編者でもあるジョン・ブランスフォード氏ら12人。そのほかにも研究者が
14人、ポストドクターが7人、大学院生が27人と、やはり大きな組織です。
たとえば、ワシントン大学の脳科学研究者バーバラ・コンボイ氏、教育研究者
のリード・スティーブン氏らは、10ヶ月の子どもにスペイン語を聞かせ、彼ら
の言語獲得の様子について、脳レベルと行動レベルの両方から分析を行うとい
う研究を行っています。また、Beating第29号でご紹介した、スタンフォード
大学のロイ・ピー氏らによるDIVER project(学びが起こっている現場をあり
のままに捉えるために、ビデオカメラを使ったプロジェクトでしたね)も、実
はこのLIFEの中に位置づけられます。
http://beatiii.jp/beating/029.html
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■でも,インフォーマルって…
確かにフォーマルな学習以外にも、学習は起っていそうです。でも…。インフ
ォーマルな場ってどこのことをいうのでしょうか?いくつかあるLIFEのフィー
ルドから、一部をご紹介します。
例えばLIFEでは、息子が事故を起こしてしまって、車が廃車になってしまった
家族の問題状況にクローズアップします。事故によって保険金はおりるのです
が、その際、車を引き取ってもらうと、$320余計に貰える。ところが、車を引
き取って$320余計貰うという単純な計算が現実世界では成り立ちません。母親
の決断は正反対でした。$320の余計な収入ではなく、息子に廃車となった車自
体を引き取らせ、その部品をインターネットを通して売るように言ったのです。
そうすることで、車に興味があった息子の車に対する知識は増え、さらに、
(結果的にですが)$320以上の利益まで生みだします。
あるいはまた、アフリカンーアメリカンの生徒の数学の成績が他の民族グルー
プに比べると良くないのは、学校の外での活動が関係しているのではないか?
という問題が取り上げられます。成績の良い生徒と悪い生徒の学校外での数学
的活動の違い(例えば、家族からの宿題のサポートの違いや学校外での活動を
数学的に考えているかどうか、などなど)から、それらの違いに光をあてよう
という試みがなされているのです。
LIFEは、こうしたインフォーマルな問題状況での学習過程を丹念に描き出しま
す。そのフィールドは、学校の中だけに限定されません。さまざまな角度から、
複雑な学びが生起している、そのダイナミックな過程をつぎつぎと描き出し
ているのです。そこでは、上記の例だけにとどまらず、MEGやfMRIなどの脳機
能解析から、教室における行動(教師の活動や少人数グループでの活動などな
ど)の分析まで、実に多彩な研究成果が、月に1つ以上というハイペースで生
み出されています。
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■LIFEのこれから
前回のLearnlabと同様、LIFEも現在進行中のプロジェクトであり、2009年の終
了までに、人々の学びに関するさまざまな知見を生み出してくれることでしょ
う。NSFが学習科学分野に対して投入した資金の大きさは、人が学ぶというこ
とを明らかにする研究に、それだけの期待がかかっていることを示しています。
LIFEはこれからも、人々の学びの全体としての“生”を追究していきます。
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●参考文献
『授業を変える—認知心理学のさらなる挑戦』
米国学術研究推進会議、森 敏昭、秋田 喜代美、 21世紀の認知心理学を創る会
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%82%92%E5%
A4%89%E3%81%88%E3%82%8B%E2%80%95%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E5%
BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6%E3%81%AE%E3%81%95%E3%82%89%E3%
81%AA%E3%82%8B%E6%8C%91%E6%88%A6-%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E5%
AD%A6%E8%A1%93%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%8E%A8%E9%80%B2%E4%
BC%9A%E8%AD%B0/dp/4762822752/sr=8-2/qid=1169690088/
ref=sr_1_2/503-2678342-6903928?ie=UTF8&s=books
●参考URL
『LIFE Center』
http://life-slc.org/
『US NSF』
http://www.nsf.gov/index.jsp
(特集記事協力:
三宅正樹/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年
平野智紀/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年)
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今号での『LIFE』の紹介、お分かりいただけましたでしょうか。
Beatingで知ってもっと学びたくなった、という方のために参考図書も充実さ
せていく予定です。どうぞご期待ください。
では、「5分でわかる学習プロジェクト講座」次号もどうぞお楽しみに!
ご意見・ご感想もお待ちしております。
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■2. 【お知らせその1】公開研究会「BEAT Seminar」2006年度第9回:
「BEAT 2006年度研究成果報告会」〜3/24(土)開催!
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「BEAT 2006年度研究成果報告会」開催について
〜モバイル・ユビキタス技術と学習環境:BEAT3年間の研究を総括する〜
東京大学情報学環・ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)では、携帯電話など
のモバイル・ユビキタス技術と学習と結びつけ、新しい利用法を探るプロジェ
クト研究を展開してきました。
このたび、BEATの3年にわたる研究をご理解いただくことを目的として、研究
成果報告会を3月24日(土)に開催いたします。
特に、2006年度に展開されたプロジェクト「なりきりEnglish」と「学習ナビ
ゲータ」については、この成果報告会で初めて研究成果を公開いたします。
年度末ご多用の折とは存じますが、ぜひご予定に加えていただき、ご参加くだ
さいますよう、よろしくお願いいたします。
-------------【プログラムのハイライト】-------------
●「親子で食育」プロジェクト成果報告●
総務省ユビキタスラーニング推進協議会の実証実験として、イオン北戸田店で
実施された携帯電話を用いた「親子で食育」プロジェクトについて報告します。
(NTTドコモ・ベネッセコーポレーション・東京大学の共同研究)
●「なりきりEnglish」プロジェクト成果報告●
社会人が英語を利用する文脈にあわせたモバイル英語学習教材
「なりきりEnglish」の開発と試行実験について報告します。
(東京大学とベネッセコーポレーションの共同研究)
●「学習ナビゲータ」プロジェクト成果報告●
学習者にとって最も適切な「学習の方法」を提案する高校生向け
ウェブサービス「学習ナビゲータ」の開発と試行実験について報告します。
(東京大学とベネッセコーポレーションの共同研究)
—————————【2006年度 第9回 公開研究会 概要】————————
●主催:
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)
http://www.beatiii.jp/
●日時:
2007年3月24日(土) 午後1時より午後5時まで
●場所:
東京大学 本郷キャンパス 一条ホール(弥生講堂内)
http://beatiii.jp/seminar/seminar-map29.pdf
●定員:
200名(参加費無料)
このところBEATセミナーは満員が続いています。
キャンセル時には、他の方に席をお譲りしますので、
恐れ入りますが、sato@beatiii.jpまでご連絡ください。
■プログラム
1.BEAT3年間の活動
BEATフェロー/東京大学助教授 山内 祐平
2.「親子で食育」プロジェクト成果報告
NTTドコモ 川上 太一
BEATコーディネータ/ベネッセコーポレーション 和気 竜也
BEATコーディネータ/ベネッセコーポレーション 中野 真依
3.「なりきりEnglish」プロジェクト成果報告
BEATフェロー/東京大学助教授 中原 淳
BEAT 客員助手 山田 政寛
国際交流基金 島田 徳子
BEAT アソシエイツ 北村 智
4.「学習ナビゲータ」プロジェクト成果報告
BEATフェロー/東京大学助教授 山内 祐平
BEAT 客員助手 松河 秀哉
BEAT アソシエイツ 北村 智
5.フロアディスカッション&質疑応答
6.NEXT BEAT-次の3年間に向けて
BEATフェロー/東京大学助教授 山内 祐平
■参加方法
参加費は無料です。
BEAT Webサイト
http://www.beatiii.jp/seminar/
にて、ご登録をお願いいたします。
※終了後、懇親会を開催します。カジュアルな会で、発表者と参加者が交流
できるものですので、ぜひご参加ください。(参加費無料)
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■3. 【お知らせその2】2006年度第8回公開研究会「BEAT Seminar」
Webサイトのご案内
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1月のBEAT公開研究会「子どもとネットコミュニティ」は、大変盛況でした。
みなさまのご参加ありがとうございました。
その内容を BEAT Webサイトに本日公開いたしました。当日出席出来なかった
方、内容を振り返りたい方など、どうぞご覧下さい。
第8回:「子どもとネットコミュニティ」:
http://www.beatiii.jp/seminar/028.html
これからもさまざまなかたちで、進捗状況や成果の報告をしていきますので、
みなさんどうぞご期待ください。
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■4. 編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
冬休み明け、息子が通う学校での茶話会後、話題に出た納豆を恥ずかしながら
買い込んでしまいました。番組を見ていない者まで動かすメディアの影響力を
実感・・・。
テレビ、新聞、雑誌、インターネット、口コミに至るまで、日常生活のあらゆ
る場面に情報は溢れています。そして、情報の発信者は大きな組織から個人に
至るまで様々です。受け手のリテラシーもますます必要とされていきますね。
今月のBEATセミナー「子どもとネットコミュニティ」においては、子どもの情
報の受発信における教育の必要性が話題に挙げられていました。ダイエットの
文字で動かされる親の姿から、子どもは十分学んでいるかもしれませんが、
子どもを守るためには、まずは保護者自身も学んでいく必要性を感じました。
次号Beatingもお楽しみに。
「Beating」編集担当
佐藤 朝美
satomo@beatiii.jp
-------次回発行は2月第4週頃の予定です。
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「Beating」編集担当
佐藤 朝美(東京大学大学院 学際情報学府 山内祐平研究室 修士課程2年)
satomo@beatiii.jp
□「BEAT」公式Webサイト
http://www.beatiii.jp/
□発行
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2007. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.
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